top of page
全期間を通じた研究交流目標

普遍的な細胞内大規模分解系であるオートファジーは、様々な生理機能を持つ。その中で、病原体や損傷オルガネラ(細胞内小器官)に対する選択的オートファジーは、疾患と密接に関わるため近年大きな注目を集めている。本研究課題では、これら選択的オートファジーの分子機構解明と、それに基づく疾患治療法の開発を目指すと同時に、3国間のオートファジー研究者の有機的ネットワーク構築と本分野の将来を担う若手研究者の育成を目的とする。

前年度までの研究交流活動による目標達成状況

<研究協力体制の構築状況>

2018年7月22~25日に、日中韓の研究者が中国青海省に集まり研究会を開催し、その席上で研究協力について討議した。その結果、韓国側拠点から若手研究者を約2週間日本側拠点に派遣し共同研究を実施することなどが決まった。この決定に基づき、下記に記載したごとく韓国の若手研究者2名が日本側拠点で実際に研究を行った。

 

<学術的観点>

オートファジーの制御因子のひとつに結合する低分子化合物を先に同定していたが、その化合物が非選択的オートファジーには影響せず選択的オートファジーのみを促進し、サルモネラの増殖を抑制することを見出した(未発表)。選択的オートファジーのメカニズム解明に資するのみならず創薬の可能性もありうる。また選択的オートファジーの転写レベルでの制御について、これまで全く知られていない経路を発見した(未発表)。

韓国側拠点のポスドク1名、大学院生1名が3/15-3-29の16日間日本側拠点に滞在し、共同研究を実施した。2名は非結核抗酸菌(non-tuberculousis mycobacteria: NTM)感染におけるオートファジー関連因子の役割について明らかにするため、主に哺乳類培養細胞を用いて解析を行っている。マクロファージを用いて、NTM症の起因菌であるMycobacterium aviumを感染させ、感染後のオートファジー活性を含むオルガネラ動態を日本側拠点がもつ高いイメージング技術を生かし観察を行った。またMycobacterium avium感染のin vivoモデルを樹立するため、日本側拠点が既に確立している線虫の実験系を用いた感染実験を行った。感染効率等を確認しており、今後の共同研究の発展が期待できる結果が得られている。

 

<若手研究者育成>

 2018年7月22~25日に、多数の若手を含む日中韓のオートファジー研究者が一堂に会し、中国青海省にて研究会を開催した。発表者18名のうち11名が若手研究者の若手中心の研究会であった。各国の研究者は未発表の研究結果を含めた最新の成果を披露し、時には批判的な意見も交えながら、非常に活発でかつ前向きな議論が交わされた。各国の研究者はいずれも同じ施設に宿泊していたため、研究会以外の時間においても盛んな議論が重ねられ、特に若手研究者間での交流が顕著であった。また、中国を初めて訪れた日本の若手研究者たちは、中国の研究面のみならず社会全体の発展に刮目させられ、背筋が伸びる思いであったと聞いている。今後の日本の研究を担う若手にとって、今回のシンポジウムは貴重な機会となったことを確信している。

 また情報収集と議論を目的としたメンバーの関連学術集会への派遣を実施した。まず、大学院生と助教の若手2名が、京都で開催された選択的オートファジーをテーマとするKeystone Symposia(本研究代表者がオーガナイザー)に参加し、研究発表と本プロジェクトの参考となる知見を得た。各国の研究者と交流ができ、大きな刺激をうけたものと思われる。助教は、本会の直前に開かれたyoung meetingにも参加し活発な交流を行った。さらに静岡で開催された第11回オートファジー研究会に助教1名と大学院生6名が参加した。The 8th International Symposium on Autophagy (ISA)に総勢29名(うち若手24名)が参加した。ポスターや口頭発表で成果を発信すると同時に、本プロジェクトに直接資する最先端の情報を多数得ることができた。若手は各国の研究者と交流ができ、大きな刺激をうけたものと思われる。

 上述のように、3月に2名の韓国側若手研究者が16日間日本側拠点に滞在し実験を行ったが、日本側若手とも活発に交流し相互の刺激になったと思われる。

 

<その他(社会貢献や独自の目的等)>

 本研究代表者が、企業向け講演会で日中韓フォーサイト事業の活動に言及した。

 

<今後の課題・問題点>

 順調に推移しており大きな問題は無いが、プロジェクトの終了に向けて成果を論文としてまとめることを目指して行きたいと考えている。

令和元年度研究交流目標

<研究協力体制の構築>

研究協力体制の強化を図るため、6月26日〜29日に北海道において3ヶ国合同の研究会を開催する予定である。

<学術的観点>

昨年度、選択的オートファジーにおける認識機構の一端を解明したので今年度中に論文発表を目指す。さらなる展開を期して共同研究を推進する。具体的には、プロテオミクス解析で浮かび上がってきた選択的オートファジーの制御因子複数について解析を実施する。

 

<若手研究者育成>

国内の関連学術集会にも若手研究者を積極的に参加させ、プレゼンテーション能力の向上、情報収集、他の研究者との交流を図る。

<その他(社会貢献や独自の目的等)>

アウトリーチ活動(市民向け講演や高校での授業など)において、本事業を紹介し日中韓の3ヶ国の研究者が積極的に交流していることを伝える。

bottom of page